コラム
2022-04-26 18:13:18
皆さんはじめまして!家具製造工房に勤め始めてはや5年。広報担当のゆうやと申します。
家具の素材と聞くと、『木材』をイメージされる方が多いんじゃないでしょうか?実際に家具屋さんに置かれている商品の8割、9割くらいは木製の商品が置かれていると思います。
ただ、木製の家具がすべての場面で1番良いのかというとそうとは言い切れません。言い換えると、全てにおいて万能ではないということです。
では、それ以外の素材にどんなものがあるのかと言うと、ガラスや石材、セラミック、金物で作られているものが多いです。
もちろん、木材をベースにして部分的に他の素材のものと組み合わせて作られている家具も多くあります。
今回はそんな木材以外の素材の中の、『メラミン』という素材について解説をしていこうと思います。
安価な素材でありながら、実用性は抜群でいろいろな柄のある、そんな素材に是非注目していって下さい!
そもそもまず『メラミン』っていう素材を聞いたことがありますか?
正式にはメラミン化粧板と言われる人工素材で、家具の表面であったり壁面の上に貼ったりする化粧材になります。
原材料は樹脂素材を紙に浸透させて、それを何層も重ね合わせて高温・高圧でくっつけた、要はプラスチック素材の化粧板になります。
板の厚み自体はものすごく薄くて約1mm程度しかないので、それ単体では使うことはあまりありません。
下地にベニヤを貼ったり、平面の壁に貼ったりと使うことが一般的です。
メラミンにもいくつか種類があります。
さっき説明したものは高圧で圧縮をした『高圧メラミン』と呼ばれるものになります。
業界的にはメラミンと言うとこの高圧メラミンのことを指します。柄の種類も木材や石目、シンプルな単色から様々あって種類が豊富なのが特徴です。
最近よくホームセンターなんかでも販売されているのが『低圧メラミン』になります。
耐久性は高圧に劣ってしまい、表面のデザインの種類もそこまで多く作られていないのですが、価格を安く抑えることができるので大量生産のものなんかによく使われています。
あとは湾曲している所に使う用の曲げ材なんてものもあったり、カッターで簡単に切って両面テープで貼ったりして使えるものなんかもあります。
では、そんなメラミン化粧板ですが家具用の材料としてはどうなのかというと、『すごく便利』な素材なんです。
特に今回は僕らが普段よく使う高圧メラミンをベースに説明していきます。
◎メラミンの特徴◎
・表面硬度が高く、傷がつきにくい
・耐熱性・耐汚性が高い
・カラーバリエーションが豊富
まず、表面硬度が高いのでなかなか傷がつきません。1番木材との大きな違いですね。
物を落としてしまっても簡単に凹んだりもしないので、特にダイニングテーブルなど日常的にモノを置いたりして使うところにはベストな素材です。
また、熱湯の入った入れ物を置いても変色したり、変形したりすることはありません。
もちろん限度はありますが、木製テーブルのようにすぐに色が変わったり溶けたりすることはないので使い勝手も良いです。
そしてなにより、耐汚性がついているのでさっと拭くだけで簡単に汚れが落ちます。
水を落としても染み込んでいきませんし、醤油や牛乳、オイル系なども簡単に拭き取れて綺麗なままです。
つまり、普段の日常生活をベースに考えた時には、木製家具なんかよりもよっぽど便利で使い勝手の良いものなんです。
例えば木製テーブルだと、表面を塗装しているとは言っても傷や凹みがすぐについてしまいますし、ウレタン塗装だと熱い飲み物を直接置いてしまうと白い輪ジミができます。
オイル塗装の製品だと水滴をそのままにしちゃうとシミができてしまいます。
そういった意味でも、メラミンのテーブルはあまり知られていませんがすごく扱いやすい素材のテーブルなんです。
あとは人工素材ならではなりますが、木材の柄だけじゃなくって石目であったり、単色であったり、様々なカラーバリエーションがあります。
そのため、お部屋の雰囲気や場所に応じてカラーを選択することが可能です。
そんな万能なメラミンですが、もちろんデメリットもあります。
◎デメリット◎
・自然の風合いがない
・欠けたり削れたりした時の修復ができない
まずどうしても人工素材なので自然の風味はありません。
手で触ってみても凹凸は人工的に付けたものなので自然ではないですし、すぐに人工物だとわかっちゃいます。
風合いを大事にされる方からすると、少し物足りない素材にはなってしまいますね。
あとは、欠けたり削れたりした時の補修ができない点です。
木製であれば削れてもパテで埋めて塗装を施せば多少綺麗になりますが、メラミンはプラスチックに近いのでどうしても欠けてしまうと修復が難しいです。
また、表面に貼って使う化粧材なので、一方向に曲げて使う分には問題ないですが、複雑な立体造形などでは使うことができないのもデメリットの1つです。
実際には家具としてはテーブルの表面であったり、棚の側板であったり基本的には平面に使うことがほとんどなのでそこまで気にはならないと思います。
実際に家具で使われる場面はどういった所かというと、先程も少し紹介しましたがダイニングテーブルの天板、棚板の天板部分、収納棚の側板の部分など平面のところに使われることが一般的です。
僕個人としてはテーブルの天板素材として使うのが1番メリットを感じることができると思います。
物を食べたり、何かそこで書き物をしたり、日常の中でもよく使う場所になります。
するとどうしても汚れてしまったり、傷がついてしまったりする確率も必然的に高まってしまいますよね。
そういった場合でも、汚れれば簡単に掃除できるし、傷もなかなかつきにくい素材のものを選んでおけば回避することができます。
そして何より、カラーバリエーションがかなり豊富なので好きなデザインのものを選ぶことができます。
木目以外の石目調のものを選ぶとそれだけで雰囲気もがらっと変わりますし、単色のものを選んで個性を出すのも選択肢の1つです。
また、切り貼りをしてデザイン性の高いテーブルなんかも作ることができるのはすごいメラミン特有の強みです。
これは木製の突板でも可能ですが、木目と石目・石目と単色、など全然違うものを組み合わせることができるのはメラミンだけです。
そういう意味では、どんな場面にも合わせてオリジナルのものを作ることができるのは、個性を出すことができるおもしろい製品になります。
価格の面でいうと、1色のみのメラミンのダイニングテーブルは大体3万~10万円程度で購入できるくらいです。もちろん、サイズにもよります。
ただ、基本的に無垢材のテーブルよりは安価に手に入ることができるので、お手頃にはなっています。
1点注意が必要なのが、高圧メラミンではなく低圧メラミンを使用している場合です。
価格は低圧の方が安いので商品価格も当然安く設定されていることがほとんどです。
ただ、性能的な面でみると、低圧は傷がつきやすかったり色味が少なかったりするので、もし購入を検討されているのであれば、是非高圧メラミンのものを選ぶようにして下さい。
メラミンに似た素材として、『ポリ合板』と『シート素材』がよく使われています。
ポリ合板は性質的にはメラミンと似てはいますが、表面硬度がそこまで高くないので傷はつきやすくなっていますが、その分価格は安く抑えられています。
シート素材は色味自体はかなり豊富にはなっていますが、耐久性が高くないのですぐに傷が付き、下地材が見えてしまうことがあります。
ただ、価格はかなり安いので大量生産の安価な家具なんかにはよく使われている素材です。
家具の材料としてはよく使われている2つですが、トータル面で考えるとメラミンの方が優秀だと思います。
もちろん、そこにも価格の問題がありますので、全部が全部メラミンで作れない問題も当然あります。
例えば、施設のパネルやカウンターを作る仕事なんかをすることがありますが、価格を抑えたい場合はやむなくポリ合板を使うことも多々あります。
皆さんも家具を購入されるときは、是非使われている素材が何なのかきちんと把握してから購入するようにして下さい。
じゃないと、思っていたのと違った!なんてこともほんとに多々起きていますので。
家具の素材として使われるメラミンが、どんな特徴を持っているかよくわかっていただけたかと思います。
最近、木製以外の素材で作られている家具を販売し始めた家具屋さんも増えてきました。
家具を実際に作っている僕らからすると、木材の家具ももちろん良さがあっていいと思いますが、日常使いに適していて木製家具よりも安く抑えたいのであればメラミン以外の選択肢はありません。
汚れに強くて、傷にも強い。それだけで扱いやすさは木製家具と比べものにならない程楽になります。
ただ、どうしても一般的に売られているメラミンのテーブルなんかは、デザインが単調でお世辞にもおしゃれと言えるものが少ないのが問題です。これは完全に売り手側に原因があります。
切り貼りをすることによって、様々なデザインを作ることができるのですが、それができる家具工房が少なくなっているのが根本の原因です。
もちろん、需要がそこまでないと判断して作っていないだけの工場もあるかもしれませんが、技術力が足りない所の方が圧倒的に多くなってきました。
元々は突板でよく使われていた技法ですが、すごく綺麗な仕上がりになります。
僕ら以外にも、こういった製品を作れる工房が増えていってくれて、いろんな家具の可能性を皆さんにお届けできればいいなと思います。