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家具に最も大事な指数『含水率』!割れ反れの原因を徹底解説

2022-05-16 13:05:58

この記事を書いた人:森口友哉

家具製造会社で営業マンとして働いています。
商品企画にも携わることで商品の特性を完全に理解して、必要な人にこだわりの商品を届けています。
また、木材のすばらしさを広めるための活動もしており、素材や家具に関して人一倍の熱量と知識があります

皆さんはじめまして!家具製造工房に勤め始めてはや5年。広報担当のゆうやと申します。

 

木製のテーブルって、使ってくるうちに割れたり反ったりしてくるのって、知っていますか?

 

しかも、新品で購入したてのものであったとしても、製品によっては割れたり反ったりすることがあるんです。

 

その原因は何かというと、木材に含まれている水分なんです。この水分量をパーセンテージで表したのが『含水率』と呼ばれるものになります。

 

今回はそんないろいろな弊害を生みだしてしまう仕組みや含水率のことを徹底解説していこうと思います。

 

これで、粗悪品を買ってしまうリスクも回避できるし、何より優良製品の見極めもできるようになるので、是非見ていって下さい。

 

木に含まれる含水率

 

まずは先程少し紹介をした含水率を詳しく解説していこうと思います。

 

『含水率』

樹の組織内部にある、水分量のことを指す指標(%表示)

 

正式には『平衡含水率』と呼ばれているもので、木材内部にどれくらいの水分量が溜まっているのかを指し示す指標になります。

 

樹も人間と同じで無数の細胞によって構成されています。

その細胞内部に水分が蓄えられていて、外気の状況に応じてその水分を出したり取り入れたりして調節をしているんです。

 

この水分が出入りする特性のことを『調湿作用』と言い、乾燥時に水分を発散し湿気が多い時には内部に取り込んでくれる機能のことです。

よく聞く木材が湿度を調節してくれると言う便利な特徴のことを言います。

 

そして、最初に説明した割れ・反れの原因となるのが、この水分の出入りによるものなんです。

 

家具に最も大事な指数『含水率』!割れ反れの原因を徹底解説

 

 

割れ・反れの原因

 

次に割れ・反れの原因について解説をしたいと思います。

 

まず、樹の内部にある水分は『自由水』というものと、『結合水』という2つがあります。

 

自由水は比較的組織内部を自由に移動ができるもので、まずこの自由水の出入りがはじまります。

反対に結合水は、細胞壁に吸着している植物特有のもので周りの水分が完全になくなってからようやく乖離が始まります。

 

例えば、外気温が高くなると先に自由水が放出され始めます。

このタイミングではまだ割れや反れといった形状変化は起きません。

そして、自由水が全てなくなった段階で次に結合水の乖離が始まります。

 

すると、細胞壁の水分がなくなってしまうので大きく細胞組織の伸縮がはじまります。

この結合水がなくなるタイミングを『繊維飽和点』と言い、ここから大きく割れや反れと言った形状変化が起こってしまいます。

 

これが割れ・反れの仕組みです。

 

家具に最も大事な指数『含水率』!割れ反れの原因を徹底解説

 

 

含水率の基準

 

では、どれくらいまで水分が下がったり、上がったりすると割れ・反れが起こるのか見ていきましょう。

 

自由水がなくなって結合水が乖離し始める繊維飽和点は、どの樹種でも大体28~30%程度と言われています。

つまり、この水準から更に乾燥し始めると大きな割れ・反れの形状っ変化が起きるということになります。

 

そして、結合水がなくなるのがこちらも大体15%と言われており、それ以下になると完全に水分がなくなるので形状変化が起こりにくくなります。

 

つまり、30~15%の間が最も大きな変化が起きるゾーンだと言えます。

 

含水率が30~15%の間にある木材で作られた家具を使っていると、何かしらの欠陥が発生してしまう恐れがあるということです。

 

ちなみに、先ほど述べた調湿作用についても水分の出入りがありますが、そちらについてはあくまでも外気温に合わせた変化を行うため木内部の状態が大きくすぐに変わるものではないので、きちんと乾燥をさせた素材であれば正しく作用が起こるので割れ・反れの原因になることはありません。

 

 

含水率の調節方法

 

そんな含水率をどうやって調節していくのかと言うと、木材をしっかりと『乾燥』をさせて調整をしていきます。

 

乾燥には『天然乾燥』と『人工乾燥』の2つがあり、それぞれを行うことで割れ・反れが起きない含水率15%以下まで持っていきます。

 

家具に最も大事な指数『含水率』!割れ反れの原因を徹底解説

 

 

天然乾燥

 

伐採をされた樹は、板状に切断をされて屋外で桟積みをして天然乾燥をしていきます。

名前の通り、屋外に置いて外気温に晒して自然に水分を飛ばしていく方法です。

 

山間部や田舎の方などに行くと、パレットなどに板がいくつも積み重なっているのを見たことはありませんか?

 

あれのことです。

 

樹種によってはすぐに乾燥できる2~3年程度のものから、7~8年以上もかかってしまうものまで様々あります。

もちろん、天候にも左右されますし時間をかけてゆっくりと乾燥をさせていく方法になります。

 

そのため、天然乾燥ではおおよそ18%が限界と言われており、その水準にまで含水率を落としていきます。

 

 

人工乾燥

 

そうして天然乾燥で落とし切ったものは、次に人工乾燥をしていきます。

 

先程述べた18%以上の乾燥となると自然の力ではできないので、人の手を加える必要があります。

人工乾燥にもいくつかの方法があり、代表的なものを挙げると低温除湿方法、遠赤外線方法、高温乾燥方法、といったものがあります。

 

人工乾燥と聞くと、高温で一気に乾燥をしていくようなイメージかもしれませんが、それだと素材に対して負荷をかけてしまうので、2~3カ月程度かけてじっくりと下げていく方がいいです。

 

落としていく含水率の水準は、乾燥を行う企業ごとに少し基準が変わってくるのですが、一般的に10%前後の所が多いようです。

それ以下の水準に落として管理をするためには余計に手間と時間のコストがかかり過ぎてしまうので、落としていくタイミングを見極めるのも難しくなります。

 

家具に最も大事な指数『含水率』!割れ反れの原因を徹底解説

 

 

含水率を見てわかること

 

この含水率を知ることによって、以下のことがわかります。

 

・商品状態の把握

・商品品質の理解

・購入先への信頼度

 

この含水率が大きく影響を及ぼすものは、1枚板テーブルや無垢板テーブルなど自然素材をそのまま使用している商品になります。

 

含水率がどのくらいあって、製造フローの中で乾燥がどれくらい正しく丁寧にされているかによって、完成された時の商品品質は大きく変わってきます。

 

それこそ、天然乾燥→人工乾燥まできちんとされることなく、出荷されている素材は実際に数多くあるのが実態です。

 

そのため、商品になった時に予期せぬ割れ・反れが起こってしまい、新品でもあるのに関わらずダメになってしまうものもあるくらいです。

 

そうならないためにも、商品として使う素材の品質がどういったものなのかを、この含水率の基準とフローから判断をすることができます。

 

また、この含水率と乾燥のやり方自体を知らずに販売しているお店も、意外とたくさんあります。

そういった意味でも、商品理解がどれくらいあるのかの1つの目安にもなってくれると思います。

 

しっかりと乾燥までさせて素材を選んで使うのにも結構なコストがかかります。

 

それこそ、乾燥しない1枚板用の板や天然乾燥のみの無垢材、また急な人工乾燥によって準備した板材などは、実際に商品にした時に安価にできてしまうのですが、品質は全く良いものではありません。

 

皆さんが購入される家具が、そんな品質のものであってほしくないからこそ、店員さんに確認をしたり、問い合わせたりして確認をするようにしてみて下さい。

 

日本での人工乾燥

 

ちょっと余談になりますが、元々日本では数多くの針葉樹用の人工乾燥を専門とする企業がありました。

 

スギやヒノキといった針葉樹の植林が盛んだったことで、それらを活用するために人工乾燥自体が必要不可欠なものだったので、乾燥自体を専門とする企業もたくさんあったんです。

 

しかし、時代が進むにつれて海外からの輸入材がメインになってしまい、国産針葉樹の活用が減ってしまったことで、針葉樹専門だけの乾燥業だけでは維持していけなくなったんです。

 

いまでは材木屋さんが代わりにしている所もありますが、数で言うとかなり少なく希少な存在になってしまいました。

 

そしてもっと言うと、広葉樹の人工乾燥が可能な企業はそれよりも少ないんです。

 

元々針葉樹よりも広葉樹の方が組織細胞自体複雑な影響もあって、針葉樹よりも難易度が難しいものでした。

 

それこそ、広葉樹を専門的に扱えてきちんと乾燥業で生計を立てている企業は、国内では家具の産地である岐阜県の飛騨高山の企業と、北海道の旭川程度しかないんじゃないでしょうか。

 

取り扱い自体が難しいことと、絶対量がかなり少なくなってしまっていて、国内で上質な乾燥ができる所が減ってきていることは、家具を作る側からしても辛い問題です。

 

ちなみに、ウォールナットやホワイトオークなど海外からの輸入材については、現地で一斉に板状にして乾燥をして出荷されるケースと、丸太のそのままの状態で日本に来てから裁断と乾燥をするパターンがあります。

 

海外の乾燥機は日本とスケールが違って、とてつもなく大きい物もあるみたいですね。

 

家具に最も大事な指数『含水率』!割れ反れの原因を徹底解説

 

 

まとめ

 

商品の品質を見極める指標の1として含水率を紹介しましたがいかがでしたでしょうか。

 

先程も少し言いましたが、乾燥が中途半端なものや含水率が15%以上のものもほんとに数多く出回っているのが現状です。

なかなかそこまでコストを割いてまでやっているところも少なくなってきたということでしょうか。

 

実際に他の家具屋さん繋がりから、1枚板テーブルや無垢材テーブルを購入されたお客様からクレームが来た、という話をよく聞きます。

そこは家具の卸をしている所なので、製造会社さんの方で未乾燥の材木を使ってしまったのが原因と話していました。

 

ただ、こういう場合もありますが、きちんと乾燥をしたものでも割れる時や反ってくるときはあります。

 

例えばクーラーの風が直接ダイレクトに当たってしまう場所だと、急激な乾燥が起きてしまって割れ反れが起こりますし、逆に常に水に当たったり湿気がすごく高い所に置いたりしても同じことが起こってしまいます。

 

なので、購入後の配置場所も少し気を使ってあげるようにして下さい。極力湿気が極度に変わらないようなところに置いてあげると問題ありません。

 

あとは個人的に少し気になるのは、最近よく他の家具屋さんで見かける1枚板テーブルがあります。

ウレタン塗装を施していてかなり分厚い塗膜の層で覆われているのですが、確かに表面は光沢感があってかなり綺麗な仕上がりでした。

 

ただ、ウレタン塗装をすると木材自体の呼吸ができなくなるので水分の出入りができなくなっている状態になります。

それが例えば角や裏側の一部に亀裂や傷が入って空気の出入りがあると一瞬で割れや反れが起こってしまうものもあるみたいです。

 

状態はすごく綺麗でいい商品なんですが、そういったものも中にはあるみたいなので、ちょっと注意が必要かなと思いました。

 

実際にそういった話も聞いたことがあるので気を付けて下さいね。

 

なかなかこういった含水率や乾燥について書かれているものや、知識として身についている店員さんも少なくなってきたみたいなので、是非これからの家具探しのための指標の1つとして活用していただければ幸いです。

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