コラム
2022-05-20 10:37:00
はじめまして!家具製造工房に勤め始めてはや5年。広報担当のゆうやと申します。
家具というと、木製家具を一般的にイメージされる方が多いんじゃないでしょうか。
当たり前のことですが、『木製』という言葉が付いている通り木材で作られている家具のことを指しています。
では、ここで一つ質問です。皆さんは、家具に使われている木材の種類をどれくらいご存知でしょうか?
一説によると、世界中の樹の種類はなんと6万種類もあるみたいで、その中で家具に適している樹の種類だけでも200種類もあると言われています。
今回はそんな中でも特に有名なものや、家具屋だから知っているおすすめの木材などをピックアップして紹介をしていこうと思います。
それぞれ特徴がありますので、是非家具購入の際の参考にしてみて下さい。
まず、日本は森林大国として皆さん認識されていると思いますが、家具の素材としてはあまり適していません。
その理由としては、スギやヒノキ、ケヤキといった有名な樹は多くあるんですが、日本で植林をされているものはほとんどが針葉樹です。
そもそも針葉樹は柔らかいので家具には向いていないのです。
ちなみにケヤキは国産広葉樹で品質もかなり高いものが多いのですが、絶対量がかなり少ないです。
街の家具屋さんに行っても、国産木材で作られている家具はそこまで多くありません。
たまに、国産材フェアなどで特集を組んでやっていたり、比較的格安で販売されていたりして、最近は少し増えてきている印象です。
そうなると国産材以外の使用、つまり家具に使われている木材の多くは、海外からの輸入材に頼っているということになります。
木材は世界中で伐採をされていて、それぞれ地域ごとに特色があります。
・北米材…日本でも有名な木材が数多くある。
・中南米材…全体的に色が濃く、独特な色味や木目を持つ。
・南洋材…高級木材の他にも、建築資材用の木材なども多数。
・アフリカ材…絶滅危機の高級木材や有名な木材が数多い。
・その他…他に分類されないがニュージーランド材、欧州材などがある。
といった具合に、地域ごとに分類がされています。
それぞれが特徴ある樹種に育つ理由は遺伝的なものが1番大きいですが、それ以外に気候・標高・日光の当たり具合など様々な要因があります。
例えば赤道付近の熱帯では、比較的色味の濃い樹が多く、逆に寒冷地帯では色味の薄い針葉樹がほとんどです。
国産の木材が家具に使われる割合はかなり少ないとお伝えしましたが、実際に使われているものにどんなものがあるのかを見ていきたいと思います。
国産針葉樹では、家具に使われているのはほとんどこの2つになります。
先程も説明しましたが、針葉樹は軽くて柔らかいので基本的に家具ではなく建具などの建材として使用されています。
最近では国産材の使用推進で、よくスギやヒノキの家具の特集が組まれています。
材料自体も比較的手に入りやすいので安価な商品が多い印象です。
日本の有名な1枚板テーブルと言えば『ケヤキ』、と昔はみんなが口を揃えて言うくらい有名でした。
ただ、年々上質なものが採れなくなってきていて価格も上昇してきています。
また、採れる品質や量なども地域によって異なり差が出てきています。
もう1つ有名なのが北海道産の高い品質で有名な『ナラ』です。
1970年代くらいまでは海外の木材と比較しても飛び抜けて品質が高くて、それでいて量もあって安価なので国内外問わず海外からも人気の高い樹種でした。
ですがあまりの人気で植林を考えず輸出をしたために、数がかなり減ってしまいいまでは価格が高騰する高級材になってしまいました。
他のものも綺麗な木目をしていて人気が高く、例えばトチは飛騨高山産が質も高く1枚板として人気があって、クルミはアメリカ産のウォールナットと親戚なので似ていますが少し色味が落ち着いています。
ただ、国産広葉樹は流通量が全体の10%以下というかなり低い水準で、植林をされている量も少なく、結局植林や伐採をして活用するにしてもかなりのコスト高になってしまうので近しい海外産の輸入材が使われているのが現状です。
元々日本の広葉樹は品質も高く人気がすごくあっただけにもったいないですよね。
では次に海外の木材を紹介していきます。まずは、有名な木材が数多くある北米材です。
1番有名なのはブラックウォールナットじゃないでしょうか。
世間一般的に言われているウォールナットのことを短縮してウォールナットと言います。
ちなみにウォールナットには他にも種類があって、クラロウォールナット、ヨーロピアンウォールナット、など他にもいろいろな種類があります。
もちろんウォールナット以外の樹種にもこういった他の種類のものもあります。
あとは白系統で有名なホワイトオークです。
日本ではナラが代替材としてよく使われていますが、ナラよりも硬く木目がはっきりとしているのが特徴で、家具屋さんでもよく販売されている樹種になります。
ホワイトアッシュは日本で言うタモに近い樹種で、タモよりも色味が白くなっています。
ブラックチェリーやハードメープルもそれぞれ落ち着いた綺麗な色味をそれぞれしていて多くの方に人気がある樹種になります。
特にハードメープルのバーズアイという杢目が乗っているバーズアイメープルはすごく希少でかなり人気のある高級材として使われています。
パイン材は針葉樹になって建材メインに使われているのですが、ホームセンターでもよく売られている比較的安価な木材です。
次に紹介するのは熱帯やジャングル、気候が暑い地域の木材です。
いまでは滅多にお目にかかれないローズウッドや黒檀といった超希少材があります。
色味も紫っぽいすごく特徴があり、ものすごく硬い木材です。大きな材がほとんどないので家具の材料として無垢材のまま使われることはありませんが、突板として使われていたり、メラミンのように人工的に木目を作ったりして使われている人気樹種です。
あとはチークですが、ウォールナット・マホガニーとあわせて世界三大銘木の1つと言われている人気の高い樹です。
経年によって色味に鮮やかさが出て、なめらかで艶やかな色彩になるすごく価格が高い高級木材です。
中南米材は日本での流通量はかなり少なく、スネークウッドやパープルハートも色彩や模様がすごく特徴的で有名な樹種にはなりますが、ほとんどの方が聞いたことがないんじゃないでしょうか。
逆にモンキーポッドやマホガニーはご存知ですか?
モンキーポッドは白と黒の対比がすごく綺麗でよく1枚板テーブルとして販売されています。
価格も安くてお手頃なんですが、20万円代くらいで手に入るものは、乾燥が未乾燥で使っているうちに割れてくるようなものもあるので、ちょっと注意が必要です。
マホガニーもすごく有名ですが、こちらも絶滅危機にある希少材です。
オリジナルはホンジュラスマホガニーという種類のものなんですが、こちらはもう絶滅してしまっていて取引されているものは代替材を使ったものになります。
もちろんオリジナルの美しさは飛びぬけていたのですが、近しいものも数多くあり色目が細やかで美しいデザインからすごく人気の高い樹種になっています。
アフリカ材も熱帯地域に属しているので色目の濃い樹種が数多くあります。
サペリやブビンガは赤系統の色味をしている珍しい種類で、綺麗な木目をしています。
ただ、これらも色味や木目がすごく綺麗で昔からよく使われてしまっていて、いまでは高級木材として活用されています。
ゼブラウッドやウエンジもまた特徴的な木目をしている樹種の1つです。
白色と灰色ベースに対して黒色の綺麗な縞模様と金色系の筋が入っている綺麗な木材です。
これもなかなか大きな材自体が少ない絶滅危惧種なので、一部分にアクセントとして使われたりします。
それでも他の地域のものと比べてアフリカ材は土地が広いので比較的大きな材が手に入りやすい地域ではあります。
ただ、絶滅危惧種のものなどは成長自体が遅いのでどうしても供給量自体が少ないので希少であることにはかわりありません。
いろいろな樹種を説明してきましたが、実際に家具屋さんで販売されている家具の樹種は偏りがあります。
その理由としては、
・安定して手に入ること
・価格帯がそこまで高くないこと
・加工がしやすいこと
以上の3点が挙げられます。
特に街中の家具屋さんや全国展開しているようなショップは安定して商品を供給する必要があるので、似たような樹種にどうしても偏ってしまいます。
逆にそれ以外の珍しい樹種を探すとなると、1枚板専門で販売しているお店だといろいろな樹種のものが置いている場合が高いですし、あとは実物が見れなくて心配ですがネットなどで探す方法だと思います。
では具体的によく販売されている樹種としては、
・ホワイトオーク ・ウォールナット ・ホワイトアッシュ ・メープル ・チェリー ・ナラ ・タモ
上記のものがよく販売されています。
やっぱりアメリカ産の北米材は安定して仕入れできるという点と、シンプルにそれぞれ綺麗なデザインをしているのですごく人気があります。
あと、数は少ないですが個人的にすごいおすすめしたいのが
・トチ(白トチ) ・メープル(バーズアイメープル) ・チーク
特にこの3つはすごくおすすめしたいです。
トチにも赤トチ・白トチという2種類あるのですが、白トチの方で縮杢という稀に綺麗で美しい模様が入っているものがあるんですが、それがすごく綺麗でおすすめです。
よくトチは1枚板テーブルで販売されていてなかなかの金額がするんですが、たまに2枚ハギで販売されているものもあって、そちらの方が正直コスパがよくておすすめです。
メープルにも同じようにバーズアイという綺麗な模様が入ることがあるんですが、これはトチよりもかなり希少なものなので基本的に突板での仕様になります。
すごく綺麗なデザインに仕上がるので人気の高い種類になります。
最後のチークに関しては昔からすごく人気のある樹種で、何よりも使っている内に色味に鮮やかさが出てきて、木製油分が多いので艶やかで肌触りが滑らかな仕上がりになります。
こちらは無垢材もありますがそこまで大きいものはありません。高級材として家具や内装材として使われています。
家具に向いている木材はたくさんあることをお分かり頂けたかと思います。
家具屋さんでよく見る木材以外にも、ほんとはあまり知られていないような樹種も数多くあります。
木材にも色目・木目などそれぞれ特徴が違いますので、出来上がってくる製品のデザインや特性もまた違ってきます。
そういった点も家具の面白さの1つで、更に言うと1台1台模様が変わることも当然あります。
いまでは採れなくなっている希少材も多くなってきていて、今後いま流通している木材もいつかは規制される可能性も大いにあります。
そしてその代わりとして、メラミンやセラミックといった人工素材が数多く登場してはいますが、やはり素材が持つ風味はオリジナルに勝つことはできません。
1人でも多くの方が分の好みの木材を見つけることができて、その家具を使えるようになればいいなと思います。