コラム
2022-07-14 11:02:22
家具製造工房で広報をやっております、ゆうやと申します!
今回は家具の素材としてよく使われる木材の原料、『樹』のことについて解説をしていこうと思います!
家具の素材には木材以外にも、メラミンやセラミック、プリント紙やシート素材などいろいろな材料がありますが、無垢材や突板で作られる木製家具は飛び抜けて人気があります。
そんな人気のある木材を、原材料となる樹について家具にした時の特徴などを踏まえて詳しく解説をしていきますので、是非参考にして頂ければと思います。
まず、『樹』は私たちの生活になくてはならない存在です。私たちの生活と深く結びついている理由を少しだけ見ていきたいと思います。
日本の国土の約67%が森林で成り立っていて、この水準は世界で見てもトップクラスになります。
その中でも天然林が53%で人工林が41%というバランスで、人工林の面積は世界で7番目に広く、日本よりも広大な土地を有している中国やロシアなどにも引けを取らない順位になっています。
そして歴史を振り返ってみても大昔から樹は私たちの生活に取り入れられており、世界最古の木造建築である法隆寺は、なんと約1300年という長い歴史を持っています。
元々樹が潤沢にあった日本だからこそ、木造建築が広く普及し一般化していきました。
いまでも私たちの生活に木材は必要不可欠な素材で、ありとあらゆる所に取り入れられています。
皆さんは、樹の種類がどれくらいあるかご存知でしょうか?
実は、世界で6万種類もあると言われてるんです。僕も最初知った時、こんなにもあるのかと驚きました。
更にその中で家具に適している木材だけでも200種類あると言われています。僕も全然知らないものもかなりあって、200種類でもかなり多いですよね。
皆さんは何種類くらい樹の種類を知っていますか?家具に興味がある方でも、10種類くらい出てくればすごいと思います。
そんな世界中にある樹ですが、育つ環境によって特徴も様々です。ちなみに、全く同じ種子を使ったとしても、場所によってそれぞれ違った育ち方をするんです。
どういった要因で変わるのかというと、『気候・緯度・標高』などが挙げられます。例えば、気候や標高が同じで、同緯度にある他の国でそれぞれ育てた場合、似たような樹に育ちますが少し特徴が違う地域特有のものが出来上がります。
逆に言うと、同緯度で似たような環境であれば似たような樹は育つとも言えます。例えば、北海道産のナラやタモはすごい高品質で人気が高い樹種になるんですが、数がかなり少なくて代わりにロシアで育てられたナラやタモを輸入してそれがメインで使われています。同じ品種でも色目などは少し違うのですが、同等品として家具の材料として表記もされています。
あとは日本で育つクルミとアメリカのウォールナットが同じ品種だったり、世界を見た時に似たようなものが結構あります。
家具によく使われる木材の特徴をまとめてみました。
軽いのに丈夫
天然素材特有の自然の風味がある
加工がしやすく、使い勝手が良い
自然素材のため2つとして同じものがない
使用していると割れたり反ったりしてくる
すべての素材の品質が均一で安定しているわけではない
鉄やガラスと違い、樹はいくつもの細胞が集まってできている独特な構造をしているので、その結果、軽くて耐久性の高い素材になっています。
また、自然界で育つ素材の為、人工素材にはない天然の自然風味を持ち合わせていて、それが多くの人に好かれる人気の秘訣になっています。
逆に自然界のものだからこそ、同じものがなかったり、素材の質が均一ではなかったりするデメリットがあるため注意が必要です。
先程も少し述べた通り、樹の内部構造は特殊な形をしています。樹は人間と同じで、いくつもの細胞が集まって組織形成しています。その組織構造の影響で、様々な木材特有の性能も有しているのです。
ここでは、そんな樹の内部構造によって持ち合わせているいくつかの特徴について、深く掘り下げていきたいと思います。
「木は部屋の湿気を調節してくれる」こんな話を聞いたことはありませんか?
これは部屋内の湿気を木材の細胞が吸収したり、発散したりする機能の1つです。
周りの湿気が高い時は過剰な分を内部に取り込み、逆に低い時はため込んでいたものを外部に放出することで調整しています。ただ、この機能が十分に発揮されるためには、木材自体がきちんと乾燥をされて余分な湿気を取り入れることができる状態のものであることと、水場が近くに合って常に湿気に充てられるような環境では意味がないので置き場所にも注意が必要です。
木材に触れて温かみを感じるのは、木材自体に熱を伝えにくい特徴があるからです。
細胞内部にある空気が断熱材の役割を果たすことによって、熱の伝わりを妨げるためです。
熱伝導率が低い比較として、スギに比べてコンクリートは約12倍、鉄は約483倍も熱を伝えやすいというデータがあります。コンクリートや鉄に触れてひんやりとするのは、それだけ外部の温度に影響を受けやすいためで、木材に触れてひんやりと感じたことはほとんどないんじゃないでしょうか。いかに熱を伝えにくい素材なのかが分かるかと思います。
一見デメリットに見えるこの特徴も、実はメリットにも考えられます。
最終的に燃やすことで処分することができ、更にその燃えた熱をエネルギーに変換できて再利用できる点は、環境にもかなりエコで効率の良い循環を作ることができます。
また、木材は一度燃焼するとその部分は炭化するため、より熱に対しての耐性が強くなります。鉄やアルミは一度燃えてしまうと一気に強度が落ちてしまうのですが、木材は以外にも耐火性が付いて強度自体は落ちないので、耐久性のある素材とも言えます。
触れた時の質感が柔らかく感じるのは、柔軟性も兼ね備えているからです。ある程度の硬さを持っていて丈夫でありながら、曲げたり、凹んだりする柔らかさを有している素材は他にはなかなかありません。
コンクリートや鉄は強度が高い分、硬度も高いので柔軟性は全くありません。いくつもの細胞が集まっているからこその特徴で、高密度の比重の高い組織を形成しているので硬いのに柔らかい特性を持っているんです。
今回は樹の特徴について少し違う視点から見てみました。
実際には、木材にもそのままのものや加工をされたものなどがあるので、使われ方によっては解説した特徴がでないものもあります。
特に合板やパーティクルボードなどは木材ではありますが、加工割合が少ないのであまり効果は期待できません。基本的に今回説明した性質は無垢材の特徴と捉えて頂いて問題ないと思います。
ただ、そんな無垢材も大きくて上質な木材は年々採れにくくなってきています。
原因としては、環境問題と過度な伐採によるものが大きいです。樹は伐採できるような大きさになるまでに平均して何十年もかかるような素材です。そんな素材であるのにも関わらず、素材の循環を考えずにあるだけ伐採してきてしまった影響で、良質で大きな材が年々少なくなってきてしまっています。
ここにきて、国産材の見直しも含め木材の活用を活性化していこうと国の動きも出てきました。後世にもこの素晴らしい素材を残していけるように、いろいろ努力をしていきたいところです。
天然の木材はデザインだけではなくって、機能面で見ても他の素材に比べて優れている点が多い素材です。家具にはもちろんのこと、家の建具にも使われることが多いため、私たちの生活の中にも数多く溶け込んでいます。
今回の記事を参考に改めて樹の良さを知って頂ければ幸いです。