コラム
2022-10-24 13:13:36
どうもこんにちは!家具の製造工房で広報担当をしております、ゆうやです!
よく家具の製造工法や作り方に『突板』という言葉が出てくるんですが、そもそも突板ってご存知でしょうか?
家具に使われる素材のことなんですが、性質上無垢材とよく比較される木製部材です。
それぞれの違いについて詳しく書いている記事は多くありますが、結局のところどんな違いがあって、どういう使い分け・買い方の判断をしたらいいのか、なかなかわかりにくいという声も多くあります。
今回は実際に突板材を使って家具も作っている僕の目線から、いろいろ知っておいた方がいいことや特徴などをお話ししていこうかと思います。
この記事さえ読んでおけば、どういったものが突板なのかがよくわかるようにまとめてあるので、是非参考にしていって頂ければと思います!
まずそもそもの突板という素材についての解説です。
一言で言うとこんな感じです。
丸太などの木材を0.2mm程度に薄い皮状にスライスしたものも『突板』と呼ぶんですが、一般的には合板と併せた板のことを突板と呼んでいます。
0.2mmの薄皮だけではすぐに破れてしまいますので、まず単体だけで使うことはほぼありません。そのため、加工をしやすくするために下地に2.5mmや4mmのベニヤ板を使います。ベニヤ板に接着剤を塗り、突板を乗せて熱圧縮をしたものを一般的に『突板』と呼んでいるんです。
突板の注意点として、1枚の突板の幅は大体150mm程度の物が多く、広くても200mm程度のものが一般的なサイズであるということを覚えておいてください。それ以上になると、そもそもベースとなる樹の素材が少なくて価格が急激に上昇します。
なので、基本的な使い方としては150サイズの物をつなげていくような形になるので1枚の幅が広く大きいものがあるわけではないのでご注意下さい。
この突板の工法が考えられたベースには、希少な木材資源をより効率的に多く使用するにはどうしたらいいか、効率性を追求して考えられた背景があります。
特に希少な杢目を持っているような素材、絶滅危惧に瀕しているような希少樹種などは、基本的に無垢板として分厚く使われることは少なく、突板として使われることが多くあります。
その結果、無垢材より安価なのに綺麗で美しい木目の家具が数多く作られるようになりました。
ちなみに、そんな突板の素材をどうやって選定するのかというと、丸太を切断してカットをしていく時に、1本の丸太の中から1番綺麗で美しい場所を1番最初に取り除かれるのが突板の素材なんです。
突板のメリット・デメリットを見ていきましょう。
・希少な木材も安価に素材として使うことができる
・割れ、反れが少なく木目が整っている
・切り貼りをすることでデザインを作ることができる【意匠貼り】
最大の特徴は希少材を安く使うことができる点です。例えばバーズアイメープルだと、そもそも家具にするための材料を確保すること自体がかなり難しい樹種です。なので、テーブルを作る場合などは、基本的にバーズアイメープルだけの突板素材を使って作られます。
そして、突板は板材であるからこそ切り貼りをしていろいろなデザインに仕上げることができるのもポイントです。色分けをするために数枚の突板を交互に貼ることはもちろん、ダイヤ型やひし形などに貼ることで見た目以上に木目の通りがよくなって美しく仕上がることがあります。
・綺麗な木目の層が薄い為、風味感が少し乏しい
・傷がついたときにすぐに下地が見えてしまう
・同じ突板の組み合わせだと全く同じ柄だけになる
そもそもの突板自体が0.2mm程度しかない為、傷がついてしまった時にすぐに下地が見えてしまいます。また、どうしても木の厚みがないために触った時の柔らかな質感も乏しくなってしまうのがデメリットになります。
突板は0.2mmに薄くスライスをして同じような綺麗な木目を何枚にも増やして使うことができる一方で、同じ木材から採った突板ばかりを使うとどうしても同じ模様ばかりに見えてしまうため飽きやすいデザインになってしまいます。なので、意匠貼りのような加工方法が採用されているのです。
最初にも少しお話ししましたが突板は無垢材との比較をされることが多い素材です。
家具選びをする時に、無垢材を使った家具・突板を使った家具という感じに分かれていることが多く、素材の特性も似ているのでよく比較されています。
ただ、勘違いして頂きたくないのですが、それぞれ全く異なる性質を持ち合わせている素材なので、どちらが良いと言った優劣をでは区別することはできません。
なので、特徴をそれぞれ簡単にまとめどういったシチュエーションで使い分けをすべきなのかを簡単に紹介したいと思います。
ちなみに無垢材というのは、丸太から中身をそのままの状態で切り出して加工をした素材のことを指します。要は、人が手を加えることなく切り出した状態をベースにしている素材と言うことです。
・希少な素材を安価に使って、意匠貼りでデザインを作ることができる
・素材の厚みがないため自然の風味が少なく、傷がつくと下地が見える
・薄くて軽い為重厚感はあまりないが、その反面割れ・反れには強い
・木材丸々使っているので重厚感があって、手触りも柔らかい
・天然物で全く同じものは他にもない代わりに、希少価値が高く価格も高い
・特に1枚板は見た目の綺麗で美しいが、割れ・反れに弱く重量もかなり重たい
簡単にまとめてみましたが、ある意味真反対の素材とも言えます。
それぞれに長所・短所がはっきりとしているので、それぞれの特徴をうまく活用できる場所で使ってあげると、どちらもすごくマッチする素材です。
◇お部屋の雰囲気◇
まずお部屋の中で木材の存在感を出したいのであれば無垢材がおすすめです。1枚板も無垢材になりますが、あるだけで存在感を発揮してくれますし、何より木目は唯一のシンボルになるのであるだけで十分インパクトが出ます。
そのため他の家具やデザインは比較的シンプルなお部屋の真ん中に無垢材のテーブルなどを配置したりするお部屋の方がいいと思います。
逆に、お部屋に統一感が既にあって清潔感・スッキリ感を演出するのであれば突板の製品を是非選んで下さい。同じ木目の連続のデザインはシンプルさを強調してくれます。非常にまとまりのあるデザイン性になるので色味を少し変えてアクセントにするとすごくまとまった仕上がりになります。
特にヨーロッパのモダンテイストをベースにしている家具には突板がよく使われていて、テーブル以外にも棚やクローゼットの側板などにもいろいろ使われることが多いです。
◇価格面◇
価格面についてはそれこそ、皆さんそれぞれ家具に使える基準が違うと思いますのでお財布とご相談をして頂くしかないと思います。
製品のおおよその基準だけご紹介したいと思います。
・突板テーブル 10万円
・無垢材テーブル(格安材) 10万円
・突板テーブル(意匠貼り) 20万円
・無垢材テーブル(高級材) 30万円
・1枚板テーブル 30万円以上
今回は突板の特徴をまとめ、無垢材との違いを比較をしてご紹介致しました。
いまの突板製品をネットで調べると、比較的安価な価格帯の商品が多く、作りも質素なものが多いイメージです。
理由としては、大量生産がベースで一般的な貼りっぱなしの簡単なデザインしか作れない、もしくは価格を抑えるために使う材料として扱われている家具が多い為です。
ですが、昔は突板の意匠貼りを行い様々なデザインの家具が販売されており、そういったものがメジャーでした。
いまではそういった技術力を持った職人が減ってしまい、コストも手間もかかってしまうためわざわざそういった家具を作り出そうとするメーカーもほとんどありません。
実際には様々な可能性を持っていて、むしろいまは他にはない個性のあるデザイン性を演出する方が好まれる傾向にあるため、突板の活用性の幅もかなり広がるんじゃないかと思っています。
そもそもの意匠貼りのこと自体知らない方の方が大多数だとは思うので、少しでもこういった可能性の幅を知って頂ければなと思います。無垢材の自然風味を味わうのだけではなく、樹の質感を取り入れつつデザイン性を演出することができる突板、すごく面白い素材です。