コラム
2022-03-15 17:08:31
皆さんはじめまして!家具製造工房に勤め始めてはや5年。広報担当の『ゆうや』と申します。
今回は家具を買うときはもちろん、DIYをする時にも是非参考にしてもらいたい知識を紹介したいと思います。
それが木材の木目である『板目』と『柾目』についてです。
木製家具や木材が好まれる理由の1つが、美しい表面の木目のデザインです。このデザインにはそれぞれどういった時に現れるのか決まったルールがあり、丸太から材料を取り出した場所によって様々な特徴があります。
家具や建具などは、たいていこの板目や柾目の特徴を生かすように使い分けられています。板目と柾目の使い分けがわかれば部屋にあった家具のコーディネートもできるし、その特徴を生かすことができればDIYで作る製品の品質も高くなります。
家具購入時ももちろんですが、ご自身でDIYをする時にもすごく役立つ知識ですので、是非ご覧になって下さい。
まず、板目と柾目は共通して『木目』と言われる木材特有の模様のことを指します。この模様の違いは、丸太を切断する場所によって生まれます。
詳しくは後ほど解説しますが、
板目 = 樹の中心を通らずに半円部分からカットして切り出したもの
柾目 = 樹の中心に向かって垂直にカットして切り出しだもの
要は、丸太の中心を通らず切断したものを『板目』、中心を通って切断したものを『柾目』と呼びます。
板目と柾目の最大の違いはデザインです。切り出し方は違うだけで品質的には同じなのですが、採れる量が違っていたり、反りやすい狂いやすかったりと違った特徴を持っています。
樹の風味が生かされている板目と、目が均一で整った美しいデザインの柾目。見た目自体が真逆とも言えるので、それぞれ使うべき場所も違ってきます。
詳しくそれぞれ見ていこうと思います。
『板目』は丸太の中心を通らずに切断した時にできる木目です。半円状部分をカットした時にできる模様は、『波模様』『タケノコ模様』なんて呼ばれたりしています。
板目はいわゆる、『ザ・木材』というような模様をしていて、自然の風味を感じることができるデザインとなっています。
樹は基本的に丸い形で外側に太く成長していきます。そのため、当然丸太を上から見た時には年輪が丸い円形になっているのがわかるかと思います。そして同時に樹は上にいけばいくほど細くもなるので、板状にカットをすると波打ったような模様になって出てくるんです。
【模様が曲線】中心を通らない為、木目が波上・山形になる
【量が多く取れる】中心を通らない分、その他の所からすべてとれるので
数が多くとれやすく、更に大きな材も取れやすい
【節が多い】柾目に比べて節が多く入る
【反れ・狂い】大きいサイズが採取できる反面、樹の中心と外側の樹皮近くでは
細胞の伸縮率が違うので反れ・割れが起きやすい
柾目は丸太の中心を通るか、中心に向かって垂直に切断した時にできる板です。樹の中心から外側の樹皮の部分を結んで切り出したものなので、年輪の方向も同じで一定して同じような模様になります。
年輪の線の方向が板目と違い、樹の芯に向かって垂直なので木目自体が並行に真っすぐ伸びた綺麗な目をしています。この垂直でキレイな目が、柾目の人気の秘訣です。
ただ、板目と違い採れる量が少ないので希少で価値が高く、販売価格も高いのも特徴の1つです。
【模様が並行】中心を通るため、木目は並行の縦線状になる
【量が少ない】中心に向かって切り出す為、採取できる量が少なくなる
【高価格】板目に比べて採れる量が少なく、更に木目が均一で美しいとされていたため
高価な素材として認知されている
【安定材】採れるサイズはそこまで大きくはないが、乾燥による伸縮が小さく、
反れや狂いも少なく変形しにくい
板目・柾目の解説をしてきましたが、それぞれどういった使い分けをしていくのがいいのかを解説していきます。
板目は木目の模様が特徴的なので、自然の風味を出したい場面や個性を出したいときによく使われます。年輪の模様、つまり木目の動きが独特なので、それ単体で視線を集めることができます。
なのでよく使われる場所としては、ダイニングテーブルやフローリングなどによく使われています。板目のランダムな木目は同じ丸太であったとしても同一のものは出てきません。だからこそ、自分だけの色・個性を出して部屋の存在感をアピールするのには、板目の製品を選んだ方がいいです。
デメリットとしては、先ほど述べたように人工物でない限り2つとして同じものがないことと、柾目に比べて板目は反りなどの変形が起きやすいことです。そのため、しっかりと乾燥をしていて反りにくい材料のものを購入する必要があります。
最近では板目の人気が高まりつつあって、特に女性やDIYをする若い方に人気が出てきています。木材を選ぶ理由の1つとして自然のものを取り入れたいという意見が多く、そのために自然の風味をより感じることのできる板目のものがよく選ばれているそうです。
柾目の最大の特徴は、真っすぐに綺麗に流れる木目です。周りのデザインにも関係しますが、平行に綺麗に流れる木目はインテリアをシンプルにすっきりとした印象にまとめてくれます。
基本的に家具屋さんにある家具の収納棚やタンスなどは柾目の方が多く販売されています。理由としては、引き出しの部分などシンプルな綺麗な仕上がりになるので、そういったものには柾目の方が向いています。また、収縮や反りが少ないので昔から和室などの化粧柱や建具などにもよく使われています。
逆にシンプルが故に、木目のみで存在感を出すことは柾目では難しいです。綺麗で整ってはいますがインパクトはないので、周りの家具と併せて魅せる必要があります。あとは板目よりも高価で、綺麗な美しいものはなかなか一般の方が手に入れるのは難しい側面もあります。
最近は板目の人気も出てきてはいますが、家具のことをよくわかっている方や年配の方は柾目の製品を選ぶことが多いです。昔から和室では基本的に柾目の柱や製品がよくつかわれていますが、それ以外の家具でもたくさん柾目のものは製造されていていまでも人気があります。
以上が板目・柾目それぞれの特徴です。
個人的な意見になりますが、木の自然の感じを表現したい場合には板目を、逆にモノトーンなシンプルなデザインに仕上げたい場合は柾目を使うことをおすすめします。
ダイニングテーブルなどの部屋の主役になるものは板目のようなインパクトのあるデザインのものの方が映えますし、逆にすっきりとした部屋の収納などにはシンプルなデザインの柾目の方がマッチします。
それぞれ好き好きで選んで頂いて構いませんし、何より板目・柾目の中でも『板目っぽくないもの』、『柾目っぽくないもの』など自然の素材ならではのものもあるので、自分が好きなデザインのものを選んで頂ければ大丈夫です。
あと、中には『追い柾』と呼ばれるような真ん中は板目で周りは柾目のようなものも結構あるので、意外と純粋な板目・柾目のものが少なかったりもします。
そもそも『木目』がどのようにできているのかご存知でしょうか?
まず、木の板の表面にある模様のことを『木目』と呼び、これは樹の1年の細胞成長で作られる『年輪』が表面に出てきた模様のことを指します。
そして、この年輪ができる仕組みですが、
・早材 → 春~夏にかけて成長する部分
・晩材 → 夏~夏の終わりにかけて成長する部分
この2つの成長した部分を組み合わせて年輪と呼びます。
もう少し詳しい説明をすると、早材と晩材はそれぞれ成長した細胞の密度が違います。なので、成長した時の細胞の凝縮度が違うので薄い所と濃い所で分かれているように見えます。
そうして成長した樹を木材としてカットした時に、年輪が板の上に木目という模様となって表現されるのです。
晩材の方が、成長が遅く密度が高いので薄い早材に比べて線のように見えます。よく、この晩材のことを年輪と言いがちですが、厳密には早材と晩材の2つの層を組み合わせて年輪と言います。
ただ注意点として、木の種類によっては早材と晩材の順番が逆のものや、そもそも早材・晩材自体がないものがあるので、すべての樹種に当てはまるものではありません。
木目の中には板目・柾目以外の特徴のある模様のパターンが出る時があります。それが『杢』というものです。この杢というのはすべての樹に出るものではなく、何十本や何百本に1本しか出ないような、特別なものになります。
この杢というのは、通常1年ごとに出来上る年輪の濃淡の違いのことを木目と呼びますが、その成長過程で何かしらの影響を受けて作られる普通と違う組織模様のことを杢目と呼んでいます。
模様の強弱や作られる場所なども完全に自然任せになるため、整った美しい杢目と出会うのは完全に運任せになります。
1枚板の中で、高額な価格が設定されているものの多くは、こういった大きな1枚板の中に美しいデザインの杢目が表れているものが数多くあります。
杢目にもいくつも種類があるので、詳しくは別記事で解説をしていますので、そちらをご覧下さい。
板目・柾目それぞれ違いがあって、何より見た目が全然違います。
僕個人的な意見としては、見た目の好き好きで選んで頂いて構いません。
機能的な違いはもちろんありますが、それ以上にどういった場所に使うものなのか・それが部屋にどういった印象を与えてくれるのか、そういったデザインをベースに判断をされるといいと思います。
板目を多く取り入れるとそれだけアクセントになる部分が増えるので部屋の個性が出てきます。逆に柾目は落ち着いたシンプルなデザインなのでモダンな感じを演出するのにはもってこいです。
先程も言いましたが、最近ではDIYをはじめ若い方や女性に木材人気が高まっていて、それと併せて自然の風味を感じることができる板目の人気が高まってきています。反対に、落ち着いた洗礼されたデザインを好む方は昔から価値が高い柾目の家具を好む傾向にあります。
好き好きとお部屋の雰囲気をどういったものにしたいかによって選択すれば問題ありません。
ただ、注意が必要なポイントとして、無垢材など天然物を使用しているもので全く同じデザインのものは2つとして存在しません。同じリピート柄がいい場合は、人工的に作られた化粧材などを使うしかありません。
板目・柾目を両方堪能できる究極の形が1枚板テーブルになります。丸太1本の端から中心まで通っているので、板目も柾目もそれ以外の目もすべて堪能することができます。それでいて、モノによっては先程少し紹介した杢目が入っているものもあるので、木目の移り変わりや意匠性を楽しむことができます。
樹種によっても板目・柾目の質感は当然違ってくるので、是非、ご自身のお気に入りの1枚を探してみて頂ければと思います。